伏せ込み

ある有名な書道家が、「私の一文字は、今迄二十万円以下では書いたことはない」と言っていました。一字を書くには何秒です。二十万円を何秒で稼ぐのですからとんでもない話です。しかし、過去数年間書き続けてきたのですから、何秒にプラス何十年かけて書いたということになります。そうすると二十万円では安過ぎます。お道の先生も、五十年間伏せ込んだ人が、何秒間の一言の話は何十万円の価値があるはずです。文字でもお話でも、その値打ちのわからない人にとってはブタにダイヤのようなものかもしれません。何十年も伏せ込んだ人の話は、受ける人の心しだいによっては、その人の運命を変えられたり病気を治すことができます。それは大変な不思議な力です。ありがたいけれどもその反面、軽くしたりバカにすると、逆に天にツバをはくようなもので恐ろしい結果にもなります。運命を狂わすどころか命を縮めることもよくあります。道に迷った時、人から道を教えてもらうことがよくありますが、いいかげんに聞いてしまうととんでもないところへ行ってしまいます。わかるまでよく聞かなかったことがいけないのです。オリンピックで金メダリストになるためには、世界一多く練習しなければならないといいます。試合の一瞬で勝負が決まるように見えますが、そうではなく実は練習しだいで決まるのですから練習の積み重ねによるものの方が大きいといいます。お道の場合も全く同じことで、神様の自由自在の不思議を見せて頂くためには、いざという時よりも、ふだんの伏せ込みのしかたが何よりも重要なことではないでしょうか。お言葉に「自由自在はどこにあると思うな、常々誠あるのが自由自在という」とあります。

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